公開している運営費の中で、保険はいちばん小さい行です。売上比0.4%(2026年8月時点、自社3棟6室、2025年8月から2026年7月の12か月。運営データに公開しています)。清掃の17.5%と並べると、ないに等しい数字に見えます。
それでも保険だけは、他の行と同じ物差しで見てはいけないと考えています。清掃や光熱費は毎月の売上を作るための支出で、保険はいちばん悪い一日のための支出だからです。この記事では、大田区、葛飾区、札幌市北区で3棟を運営する私たちが、保険をどう考え、壊れ物の実務をどう回しているかを書きます。保険商品の紹介や法律の解説はしません。契約は物件ごとに違うので、最後の答えは保険会社への確認です。
民泊の保険は、何が起きたときのためのものですか
整理すると3つの層です。建物そのものの損害、ゲストや近隣への賠償、そして室内の家財の損害。この3つは別々の質問で、1枚の契約に全部が入っているとは限りません。
| 層 | 起きることの例 | 確認する場所 |
|---|
| 建物 | 火災、水漏れ、雪害 | 火災保険の契約内容 |
| 賠償 | 階下への水漏れ、ゲストのけが | 賠償責任の補償範囲 |
| 家財 | ゲストによる破損・汚損 | 家財の特約と免責金額 |
用語をひとつだけ。施設賠償責任保険とは、施設の欠陥や管理の不備で他人に損害を与えたときの賠償をカバーする保険のことです。民泊で近隣との関係を守る層はここで、雪の多い札幌では建物の層に雪害が入っているかも同じ重さで見ています。
住居用の火災保険のままで営業してもいいですか
いちばん危ないのがこの状態だと私たちは考えています。宿泊事業として使い始めた時点で、「誰がどう使う建物か」という契約の前提が変わるからです。
確かめ方はひとつです。保険会社か代理店に、旅館業許可を取って宿泊事業に使うことを伝え、その用途で契約が有効かを書面で確認する。口頭の「大丈夫だと思います」は、事故の日には残っていません。
ゲストが物を壊したら、誰が払うのですか
実務では、小さな破損のほとんどは保険もゲストへの請求も使わず、運営費の中で吸収しています(2026年8月時点、自社6室の運用)。
12か月で449件の予約、平均3.3泊。この回転だと、グラスが欠ける、椅子の脚がゆるむ、シーツにしみが残る、は事件ではなく日常です。1件ずつ保険を使う手間と免責金額、少額をゲストに請求して失うものを考えると、修繕1.1%と消耗品4.2%の中で処理するのが合理的でした。この構造は民泊の収支の読み方に書いています。
大きな損害で決め手になるのは、いつ発生したかを示せることです。私たちは清掃のたびに作業後の室内写真を残しています。この記録がないと、どの滞在で起きた損害かを証明できず、請求も保険も動かせません。
予約サイトの補償があれば、保険は要らないのですか
要らない、とは考えていません。プラットフォームの補償は自分が契約者である保険ではなく、条件も対象も運営側の判断で変わるからです。
実務的な穴がもうひとつあります。補償は原則そのプラットフォーム経由の予約が対象で、公式サイトからの直接予約には効きません。私たちのように直接予約の窓口を持つ運営では、補償だけに頼る設計は最初から成立しません。条件は要約ではなく原文を、最新版で確認してください。この記事の記述も、あなたの契約の代わりにはなりません。
契約の前に、代理店へ何を聞けばいいですか
金額の前に、次の5つです。答えが曖昧なまま残った項目が、事故の日に揉める項目になります。
- ◆宿泊事業(旅館業)としての利用が契約に明記されるか
- ◆被保険者は誰か。所有者か、運営者か、両方か
- ◆階下や隣室への水漏れなど、第三者への賠償はどこまで入るか
- ◆ゲストによる家財の破損・汚損は対象か。免責金額はいくらか
- ◆事故で部屋を売れない期間の扱いはあるか
保険料を削る努力は、私たちの実績で言えば売上の0.4%をさらに小さくする作業です。同じ時間を清掃品質か価格設定に使うほうが、収支への効きははるかに大きいと考えています。
運営を任せる場合、保険は誰が入るのですか
私たちの代行では、許可も建物もオーナー様に残るので、建物の保険はオーナー様の契約のままです。運営中に何を記録し、費用をどう分けるかは、開始前の契約で決めます。
物件を拝見するときは、建物の状態と並んで、いまの保険契約に用途がどう書かれているかを確認項目に入れています。住居用のまま、という状態はこの一問でよく見つかります。
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