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旅館業許可の取り方:保健所、消防、近隣説明の実際

2026年8月6日 · 河邊亜美, All Good Stay 代表

図面と鍵、町家の模型

私たちは大田区、葛飾区、札幌市北区で旅館業(簡易宿所)の許可を取り、いまも自分たちでその宿を運営しています。許可番号は会社概要公開しています。3件ともスムーズだったわけではなく、順番を間違えて時間を失った場面もありました。

この記事は、これから物件を宿にしようとしているオーナー様に向けて、実務の順番で書いています。制度の詳細は自治体ごとに違い、変わることもあります。最終的な判断は必ず、その物件を管轄する保健所と消防署への事前相談で確認してください。

旅館業許可を取得した葛飾区の一棟(KAMEARI)の外観
葛飾区のKAMEARI。この記事に書いた手順で許可を取り、いまも自分たちで運営している一棟です。

最初に決まってしまうこと:用途地域と建物

物件を見た瞬間に決まる部分があります。ここで無理な物件は、お金をかけても許可になりません。順番として、まずここを確認します。

  • 用途地域:住居専用地域では旅館業は原則として営めません。工業地域と工業専用地域も同様です。市区町村の都市計画情報で確認できます
  • 建物の用途:住宅から宿泊施設への用途変更が必要かどうか。延べ面積が200平方メートルを超える場合は建築確認申請が必要になります
  • 接道と階段、避難経路:建築基準法と消防法の両方から見られます
  • 自治体の上乗せ条例:学校や保育施設の近くで距離制限や意見照会が入ることがあります

私たちが最初にやった違いは、内装の見積もりを先に取ったことです。順番は逆で、保健所と消防への事前相談が先、内装はその後です。相談の段階で「この構造だと難しい」と言われることは実際にあり、その一言で数十万円の設計費が浮きます。

実際の順番

客室の面積や設備の基準(洗面、浴室、便所の数など)は、宿泊定員と自治体によって変わります。玄関帳場(フロント)についても、ICTによる代替が認められる条件が自治体ごとに定められています。ここは一般論で判断せず、必ず管轄の保健所に確認してください。

  • 1. 物件の下見と、用途地域と延べ面積の確認
  • 2. 保健所への事前相談。図面の下書きを持って行くと話が早い
  • 3. 消防署への事前相談。必要な設備(自動火災報知設備、誘導灯、消火器など)がここで決まる
  • 4. 必要なら用途変更の建築確認申請
  • 5. 図面の作成と工事、消防設備の設置
  • 6. 近隣への説明。自治体によっては要件、そうでなくても実際には必須
  • 7. 消防の検査と、消防法令適合通知書の交付
  • 8. 保健所へ許可申請(申請書、構造設備の概要、図面、水質検査結果、法人なら登記事項証明書など)
  • 9. 保健所の現地検査
  • 10. 許可証の交付。ここでようやく営業開始

期間と費用の目安

項目目安備考
全体の期間3か月から6か用途変更が必要な場合や、消防設備の工事が大きい場合はさらに延びます
消防設備数十万円から自動火災報知設備が最も大きい。建物の規模と既存設備で大きく変動
図面作成・用途変更数十万円から百万円単位既存図面がない古い建物ほど高くなります
申請手数料2万円前後自治体により異なります
行政書士に依頼する場合10万円から30万円程度自分で進めることもできます。時間との交換です
全体で3か月から6か月事前相談2〜4週設計・用途変更1〜2か月工事・消防設備1〜2か月検査・申請3〜6週
実際に時間がかかるのは書類ではなく、工事と検査です。事前相談を先に済ませるほど、後半が短くなります。

つまずきやすい4つの

  • 既存図面がない:古い一軒家では珍しくありません。作り直しが必要になり、期間も費用も一段上がります
  • 消防を後回しにする:内装を決めてから消防要件が出てくると、やり直しになります。相談は必ず内装より前に
  • 近隣説明を軽く見る:反対が出ると許可そのものより長引きます。工事の前に、営業開始後の連絡先を明記して回るのが結局は近道です
  • 水質検査を忘れる:貯水槽のある建物では時間がかかることがあります。申請書類の中で最も忘れられがちです

旅館業と民泊新法、どちらで始めるか

旅館業許可には営業日数の上限がありません。民泊新法(住宅宿泊事業)の届出は年間180日までです。単純に言えば、稼働の半分を制度で失うかどうかの違いで、収支の前提が変わります。一方で新法の届出は手続きが軽く、期間も費用も小さくて済みます。

私たちの宿はすべて旅館業許可ですが、代行としては新法の物件もお預かりしています。どちらが向くかは、物件の構造、用途地域、そしてオーナー様がどれだけ初期投資できるかで変わります。制度そのものの違いは旅館業と民泊の違いまとめました。

物件が許可を取れるか相談する

よくあるご質問

許可が下りるまでどのくらいかかりますか。
3か月から6か月が目安です。用途変更の建築確認が必要な場合や、消防設備の工事が大きい場合はさらに延びます。書類だけなら早いのですが、工事と検査に時間がかかります。
マンションの一室でも取れますか。
用途地域の条件を満たしていても、管理規約で民泊や旅館業が禁止されていれば取れません。区分所有の物件では、まず管理規約と管理組合の確認が先です。
自分で申請できますか。
できます。手続き自体は公開されていて、保健所も丁寧に教えてくれます。行政書士に頼むかどうかは、平日の昼間に何度も窓口へ行ける時間があるかどうかの問題です。
許可を取ったあとの運営もお願いできますか。
はい。許可の取得から運営開始まで通してお引き受けするのが立ち上げプランです。詳しくはオーナー様へのご案内ご覧ください。

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