自社3棟6室の稼働率は、2025年8月から2026年7月までの12か月で83.6%でした。内訳は東京の3室が85.4%、札幌の3室が82.0%です(2026年8月21日時点、計算方法とあわせて運営データに公開しています)。
ただしこの83.6%は、12か月のうちどの月にも起きていない数字です。月別に見ると最低76.3%、最高90.3%で、幅は14.0ポイントあります。稼働率という指標を分母から読み直して、他社が出す数字を検算できるようにするのがこの記事の目的です。
稼働率とは、何を何で割った数字ですか
売れた泊数を、売れたはずの泊数で割った数字です。分子はほぼ揺れませんが、分母の作り方に業界共通の決まりがないので、同じ物件でも書き手によって数字が変わります。
自社は分母をこう作っています。自社の予約管理システム上の成立予約だけを数え、物理的な部屋を1室として1回だけ数え、部屋はその部屋が開業した月から数えます。亀有のように一棟貸しと部屋貸しを同時に掲載している場合は、掲載面ではなく部屋の側に開いて数えます。ここを掲載単位のまま足すと、同じ1泊が二重に入って100%を超えます。
平均83.6%は、月ごとにどれだけ振れますか
14.0ポイントです。最低は2025年8月の76.3%、最高は2025年10月の90.3%でした(2026年8月21日時点、自社3棟6室・12か月)。
| 月 | 全体 | 東京3室 | 札幌3室 |
|---|
| 2025年8月 | 76.3% | 72.6% | 83.9% |
| 2025年9月 | 83.3% | 81.7% | 86.7% |
| 2025年10月 | 90.3% | 95.2% | 80.6% |
| 2025年11月 | 80.8% | 93.3% | 68.3% |
| 2025年12月 | 81.9% | 78.5% | 87.1% |
| 2026年1月 | 81.9% | 80.6% | 83.9% |
| 2026年2月 | 89.3% | 84.5% | 94.0% |
| 2026年3月 | 87.6% | 84.9% | 90.3% |
| 2026年4月 | 80.6% | 90.0% | 71.1% |
| 2026年5月 | 84.9% | 91.4% | 78.5% |
| 2026年6月 | 81.7% | 85.6% | 77.8% |
| 2026年7月 | 84.4% | 87.1% | 81.7% |
東京と札幌は、同じ月に同じ方向へ動きますか
動きません。2025年11月は東京が93.3%、札幌が68.3%で、同じ会社、同じ月、同じマニュアルの部屋が25.0ポイント離れました。逆に2026年2月は札幌94.0%に対して東京84.5%です。
年間の振れ幅も都市のほうが大きくなります。portfolio全体は14.0ポイントですが、東京だけなら22.6ポイント、札幌だけなら25.7ポイントです。2都市を1つの数字にまとめると平均は安定しますが、その安定はどちらの都市の姿でもありません。1棟しか持たないオーナーが参照すべきなのは、会社の平均ではなく、その都市のその月です(札幌側の事情は雪国の民泊に書きました)。
稼働率は高いほどいいのですか
よくありません。稼働率は値段を下げれば買える数字なので、平均日単価(ADR、売れた1泊あたりの平均価格)とセットでしか意味を持ちません。
売上は稼働率と単価の掛け算なので、値下げして稼働を買ったときに売上が並ぶ稼働率は先に計算できます。自社の83.6%を出発点にすると、こうなります。
| 単価の下げ幅 | 売上が並ぶ稼働率 | 83.6%からの必要上げ幅 |
|---|
| 5%下げる | 88.0% | +4.4ポイント |
| 10%下げる | 92.9% | +9.3ポイント |
| 15%下げる | 98.4% | +14.8ポイント |
| 20%下げる | 104.5% | 到達不能 |
値下げで稼働を買うと、費用側では何が起きますか
泊数が増えた分だけ入れ替えが増えるので、最大の費用項目が売上に対して重くなります。稼働だけを見ていると、この側が見えません。
83.6%から95%へ上げるのは、泊数が1.136倍になるということです。平均3.3泊で回っているなら入れ替えも1.136倍で、清掃は売上の17.5%から、同じ売上に対して19.9相当まで増えます。ところが単価を15%下げていれば売上のほうは96.6に落ちているので、清掃は売上の約20.6%になります。売上が3.4%減って、最大の費用項目が3ポイント重くなる。これが「稼働率は上がったのに手元が減った」の正体です(民泊の清掃、月次P/Lの読み方)。
では、稼働率は何%あればいいのですか
目標にすべき数字は稼働率ではなく、単価を落とさずに埋まった泊数です。稼働率そのものに合格ラインを置くと、値下げがいちばん簡単な達成手段になってしまいます。
そのうえで、上限のほうは制度で決まる場合があります。民泊新法(住宅宿泊事業法)の年間180日という上限は、満室で回しても180÷365で49.3%が天井になるという意味です。旅館業許可にはこの上限がありません(許可と新法のどちらで始めるか)。
月の途中で稼働を作り直せるかどうかも、あらかじめ決まっています。自社の12か月449件の予約は、予約から到着までの中央値が42日でした。半分の予約が6週間以上前に入っているということなので、来月の稼働はすでに半分が確定しています。直前の値下げが動かせるのは残りの半分、それも上の表の算数を通したうえでの話です。
他社の「稼働率95%」は、どう検算しますか
数字そのものではなく、分母と期間と対象を聞きます。この3つを揃えないと比較になりません。自社の実数でも、切り取り方を変えれば90.3%と書けます。
| 聞くこと | なぜ数字が変わるか |
|---|
| いつからいつまでの数字ですか | 良い1か月や良い四半期を切り出せば、同じ実績が10ポイント上に見えます |
| 運営している全室ですか、一部ですか | 良い1室の数字は、その会社ではなくその建物の数字かもしれません |
| 分母は開業日からですか、契約日からですか | 準備中の空室月を分母から外すと上がります |
| オーナー利用や工事で止めた日は分母に入っていますか | 外すと上がります。入れるかどうかで数字の意味が変わります |
| 一棟貸しと部屋貸しを両方掲載している部屋は、どう数えていますか | 掲載単位で足すと同じ1泊が重複し、100%を超えることがあります |
自社が約束すること、しないこと
他人の物件について、何%になるとは言いません。稼働率は立地、間取り、収容人数、季節、そして単価の設定が合わさった結果で、運営側が持てるのはその一部だからです。83.6%は自社6室の実績であって、これからお預かりする物件に出る数字ではありません。
約束できるのは方法のほうです。計算方法を公開したうえで全室の数字を出すこと、季節ではなく日々の単位で単価を見直すこと、そして稼働率と単価を必ず並べて報告することです。片方だけを見せる報告は、良く見せるためにいくらでも作れます。