迷惑なゲストへの対応でいちばん先に決めるのは、相手をどう思うかではなく、どこまでが正当なご指摘で、どこからが現場を壊す行為かという線です。線が人によって動くと同じ建物の中で対応が割れ、割れたときの緩いほうが次の要求の基準になります。
以下は、2025年10月から2026年9月の12か月に東京と札幌の3棟6室で受けた489件の予約の運営記録と、2026年6月23日に公開した自社のカスタマーハラスメントに対する基本方針に沿って書いています。数字の数え方は運営データに公開しています。件数と割合と日数だけで書き、金額は出しません。
正当なご指摘と、カスハラの線はどこにありますか
線は要求の中身ではなく、要求の求め方のほうに引きます。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、お客様からの言動のうち、要求の内容の妥当性に照らして、それを実現するための手段や態様が社会通念上相当な範囲を超えていて、働く人の就業環境を害するものを指します。これは自社の公開方針にある定義で、言い換えずにそのまま運用しています。効くのは後半です。中身が正当でも求め方が越えていれば線の外側になり、逆に言い方が強いだけで中身が正当なご指摘なら、謝って直す対象です。
線を内容のほうに引くと、現場は毎回「どこまで我慢するか」を判断させられます。求め方のほうに引けば、判断の対象が人格ではなく行為になるので、担当者が代わっても同じ答えが出ます。
| 言われていること | 正当なご指摘として扱う形 | 線を越えたと扱う形 |
|---|
| エアコンが効かない | 写真をいただき、点検と修理の時刻をこちらから伝える | 深夜に10分おきの着信を続け、担当者の私物の連絡先を求める |
| 掲載写真と部屋が違う | どこがどう違うかを具体的に挙げていただく | 根拠を示さないまま、全額返金と次回の無料宿泊を同時に求める |
| 隣の部屋の音がうるさい | 時刻と場所を教えていただき、こちらが当事者に当たる | 低評価の投稿をほのめかして減額を求める |
| 清掃に不備がある | その場で写真をいただき、再清掃か減額で対応する | 清掃担当者の人格を否定する言葉を繰り返す |
実際に多いのは、どんな場面ですか
多いのは怒鳴り込んでくる人ではなく、正当な不満から要求がだんだん膨らんでいく場面です。
12か月で489件、6室12か月で割ると1室あたり月およそ6.8組が入れ替わり、そのほとんどの滞在では何も起きません。起きるときの形は、だいたい次の5つに寄ります。何件がカスハラに当たったかは出しません。数えて公開できる形で記録してこなかったからです。
- ◆設備の不具合から始まり、修理の提案を聞く前に全額返金へ飛ぶ
- ◆掲載を読まないままの「写真と違う」。線路沿い、浴槽なし、エレベーターなしがこれに当たります
- ◆掲載していない人数での利用を、到着してから追加で求める
- ◆深夜と早朝の執拗な連絡と、返事が数分遅れたこと自体への苦情
- ◆現地で清掃の担当者に向けられる言葉
連絡が来てから最初の30分で、何をしていますか
最初の30分でやるのは、言い返すことでも値引きを決めることでもなく、事実と時刻を揃えることです。
自社の平均宿泊日数は3.3泊です。不満が出てから滞在が終わるまでに残っているのは長くて数日、多くは当日と翌日だけで、直せるものを直す時間はそこにしかありません。だから順番を固定しています。やり取りを私物の連絡先に移さないのは、記録の残らない場所に移った瞬間に、深夜の執拗な連絡を止める手段がなくなるからです。
- ◆まず受け取ったことを返す。内容への回答より先です
- ◆何が、いつ、どの部屋で起きたかを、時刻つきで書き取る
- ◆写真か短い動画をいただく。言葉だけの記録は翌月には食い違います
- ◆現地に人が要るかどうかを決める
- ◆いつまでに何を返すかを、こちらから先に伝える
- ◆やり取りはプラットフォームの画面の中で続け、私物の連絡先には移さない
返金や減額には、どこまで応じますか
応じるかどうかは、相手の勢いではなく、こちらに不備があったかどうかで決めます。
不備があったときは直します。再清掃、部品の交換、代わりの設備、それでも足りなければ減額です。費用はもともと持っている費目の中の話で、清掃が売上の17.0%、修繕が1.0%です(2026年10月1日時点、直近12か月の売上に対する比率、運営データ)。
不備がないのに出てきた要求には応じません。1泊分の返金は、清掃1回ぶんのおよそ1.8倍にあたります。稼働83.7%と平均3.3泊なら1室は月およそ7.6回入れ替わり、売上の17.0%が清掃なので、入れ替え1回はおよそ0.56泊ぶんです。
それでも断る本当の理由は費用ではありません。根拠のない要求に一度応じると、同じ求め方が次の予約にも来ます。基準を勢いではなく不備の有無に置くのは、その一点のためです。応じたときも断ったときも、理由と根拠を同じ形で記録に残します。
低評価をほのめかされた要求は、どう扱いますか
応じません。応じた時点で、星が交渉の道具になるからです。自社の公開方針も「レビューやSNSへの投稿をほのめかした不当な要求」をカスハラの例として明記しています(2026年6月23日公開)。
星が惜しくないわけではありません。自社6室には398件のレビューがあり平均は4.9です(2026年10月1日時点)。平均は件数の上に積まれているので、1件の低評価を打ち消すには高評価が何件も要ります。それでも、脅しで買った星は次の交渉の値段になります(レビュー評価)。
やることは二つです。不備があれば直して、直したことを公開の返信に書く。その返信を読むのは投稿した本人ではなく、次に検討している人です。もう一つ、プラットフォームの規約で申し立てられる場合があるかを確認する。削除をお約束することはしません。
現地の人は、どうやって守っていますか
一人で対応させないことです。方針の最初の行がそれで、運用でもそこだけは崩しません。
物件の中で最初に言葉を受けるのは、たいてい清掃の担当者です。清掃は売上の17.0%を占めるいちばん大きな費目であり、同時に現地に身体がある唯一の職種でもあります。判断を背負わせないために、現地のルールは三つだけにしています。
- ◆その場で判断しない。返金、変更、例外の可否をその場で答えない
- ◆その場を離れてよい。身の危険を感じたら作業を中断して出る。中断の判断を後から責めない
- ◆受けた言葉は、言われたとおりに書いて送る。要約も、やわらげる書き換えもしない
方針を公開しておくと、現地で何の役に立ちますか
担当者が、その場で持ち出せる根拠を持てます。一人で対応させないこと、相談の窓口を置き相談を理由に不利益な扱いをしないこと、カスハラ対策としてお電話と施設での対応を録音する場合があることは、2026年6月23日公開の基本方針に社外へ向けて書いてあります。録音の目的は防止と事実確認で、管理は代表取締役、目的外には使いません。
ただし、条例が事業者に何を求めるかは自治体ごとに違い、変わります。ひな形を写さず、自分の自治体の現在の求めと自分の文面を専門家に当たってください。公開する以上、書いたとおりに運用できないほうが、公開していないより悪くなります。
宿泊をお断りすることはできますか
できる場合とできない場合があり、この記事では結論を書きません。断れるかどうかは、旅館業法の定め、ご自身の宿泊約款、予約が入ったプラットフォームの規約の三つで決まり、どれも物件と時期で変わるからです。古い条文の記憶や、他社の運用をそのまま当てはめるのが、この領域でいちばん高くつく間違いです。
自社の公開方針には、カスハラに該当する行為には毅然と対応し、状況に応じて対応の中断、お断り、ご予約のお取消し等の措置を講じる場合がある、悪質な場合は警察や弁護士と連携する、と書いてあります。ただしそれは方針で、個々の案件で何ができるかは次の順で当たってから決めています。
- ◆許可を出した保健所に現在の扱いを聞く。口頭で終わらせず、根拠になる条文の名前まで控える(旅館業許可の取り方)
- ◆自社の宿泊約款を読む。断る場合と手順が書いていなければ、約款を直すところから始める
- ◆プラットフォームの規約で、ホスト側から取り消せる場合と、それが掲載や評価に及ぼす影響を確認する
- ◆それでも迷う案件は、行政書士か弁護士にその日のうちに聞く
- ◆判断と根拠と相手の行為を記録に残す。二度目があったとき効くのは記録だけです
代行に任せると、ここは何が変わりますか
変わるのは、オーナー様が線を引く係から外れることです。
自主運営でいちばん消耗するのは、深夜に連絡が来ること自体より、毎回ゼロから「どこまで応じるべきか」を決めることです。基準が先にあり、現地の担当者がその場で判断せず、記録が同じ形で残るなら、同じ出来事でも後に残るものが違います。お預かりしている物件については、月次の報告にその月の案件と対応を書きます。夜間の一次応答の仕組みはゲスト対応は24時間必要かに書きました。
お預かりするのは東京23区と札幌市で、旅館業許可で動いている物件か、これから許可を取る物件です。年180日の民泊新法のまま運営をお任せいただくことはできません(旅館業許可と民泊新法)。同時にお預かりするのは5件までで、下見のうえでお断りすることもあります(お断りする物件)。
報酬は売上の20%からの成果報酬で、予約のない月に固定の支払いはありません。この記事の数字はすべて自社6室の記録で、お預かりする物件の評価や予約数をお約束するものではありません。
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