東京で民泊を考えるとき、いちばん危険な思い込みは「東京のルール」が存在するという思い込みです。民泊新法は全国法ですが、各区は条例で独自の上乗せ制限を重ねられます。結果、同じ物件条件でも、区が変わるだけで営業できる日数も曜日も変わります。
私たちは大田区と葛飾区で旅館業許可を取り、いまもその宿を運営しています。この記事は区ごとの制限を一覧にする記事ではありません。一覧は作った瞬間から古くなるからです。かわりに、どの区でも通用する確認の順番と、制限の典型パターンを書きます。
上乗せ条例の典型パターン
民泊新法への区の上乗せは、おおむね次のどれかの形をとります。物件を検討するとき、候補の区がどのパターンかを区の公式ページで確認してください。
- ◆曜日制限:住居系地域では週末や祝日前後しか営業できない形。平日需要(出張・長期)が取れなくなり、180日の上限がさらに実質目減りします
- ◆期間制限:学校周辺や特定エリアでの期間・区域の制限
- ◆手続きの上乗せ:近隣説明の義務化、標識掲示、苦情窓口の設置要件など
- ◆上乗せほぼなし:法定どおり180日で運営できる区もあります
重要なのは、これらの上乗せが原則として民泊新法(届出)に対するものだという点です。旅館業許可で営業する場合、180日の上限も曜日制限も関係ありません。かわりに用途地域の制約(住居専用地域では不可)がかかります。つまり東京の民泊は実務的に、「商業・準工業などの地域で旅館業許可を取る」か「住居系地域で区の上乗せ込みの新法でやる」かの二択になりがちです。
大田区だけの第三の道:特区民泊
大田区は国家戦略特区として、特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)の認定を出しています。年間日数の上限がなく、かわりに2泊3日以上の滞在が条件です。羽田空港を抱える大田区の立地と、連泊前提の運用が噛み合う場合には有力な選択肢です。
私たちのHEIWAJIMA(大田区)は旅館業許可で運営しています。1泊のトランジット需要を取りたかったからで、ここでも答えは目的次第です。連泊中心の設計なら特区民泊、1泊も取りたいなら旅館業、という整理になります。
物件を見るときの確認の順番
- ◆1. 用途地域を調べる(都市計画情報はオンラインで公開)。商業・近隣商業・準工業なら旅館業許可の道が開きます
- ◆2. 区の民泊ページで新法の上乗せを確認する。「(区名) 住宅宿泊事業」で検索すれば公式ページが出ます
- ◆3. 分譲マンションなら管理規約。民泊禁止条項があれば制度に関係なく終わりです
- ◆4. ここまで通ったら、需要側の確認へ:駅からの距離、周辺の稼働、単価。見方は空き家の記事と同じです
- ◆5. 最後に保健所と消防へ事前相談。ここから先は旅館業許可の取り方の手順どおりです
どの区が「良い」のか
正直な答えは、「規制が緩い区」より「需要と物件価格の釣り合いが良い区」です。規制が緩くても需要がなければ意味がなく、需要が強い区は物件も高い。私たちが葛飾区(亀有)と大田区(平和島)を選んだのは、どちらも観光地図の外にありながら、電車で需要地に直結していて、物件価格に対して単価が立つからです。同じ構図の区は23区にまだ残っています。
候補の物件があれば、その区のルールを含めて見立てをお出しします。
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