自社3棟6室の運営コストは、2025年8月から2026年7月までの12か月で、売上に対して27.9%でした。内訳は清掃17.5%、消耗品4.2%、電気2.6%、修繕1.1%、宿泊税1.1%、ガス1.0%、保険0.4%です(2026年8月21日時点、計算方法とあわせて運営データに公開しています)。
ただしこの27.9%は、そのままオーナーの物件に当てはまる数字ではありません。家賃と代行手数料を意図的に外してあり、水道が集計元から欠けているからです。この記事では、7費目の中身と、外してある行の理由と、自分の物件用に組み直す手順を書きます。
運営コストは売上の何割ですか
自社の実績では、ここに挙げる7費目の合計で売上の27.9%です。費目ごとの割合と、その行が何で動くかを並べます。
| 費目 | 売上に対する割合 | その行を動かすもの |
|---|
| 清掃 | 17.5% | 入れ替えの回数 |
| 消耗品 | 4.2% | 入れ替えの回数と滞在人数 |
| 電気 | 2.6% | 季節と在室日数 |
| 修繕 | 1.1% | 建物の状態と経年 |
| 宿泊税 | 1.1% | 自治体の制度と宿泊単価 |
| ガス | 1.0% | 季節と在室日数 |
| 保険 | 0.4% | 契約の内容 |
| 合計(家賃・代行手数料・水道を除く) | 27.9% | 上の7行の合計 |
この表で最初に見るべきなのは、合計ですか
合計ではなく、1行目と残りの比です。清掃ひとつで17.5%、残り6費目を全部足しても10.4%にしかなりません。清掃は7費目の合計の62.7%を占めています。
つまり運営コストを管理するというのは、実務上その1行を管理することとほぼ同じ意味になります。逆に、下から4費目(修繕1.1%、宿泊税1.1%、ガス1.0%、保険0.4%)は合計しても3.6%で、消耗品4.2%の1行にすら届きません。
この27.9%には、何が入っていませんか
4つ入っていません。家賃、代行手数料、水道、そして予約サイトの手数料です。オーナーが自分の物件を計算するときは、この4行を自分で足し直すことになります。
| 入っていない行 | なぜ入っていないか | オーナーの物件ではどうなるか |
|---|
| 家賃 | 自社は運営している建物を借りていて、この費用はオーナーの立場と対応しないため | 自己所有ならゼロ。ローン返済と固定資産税に置き換わります |
| 代行手数料 | 自社物件は自社で運営しているので、そもそも発生しないため | 代行に出すなら売上の一定割合が加わります(当社は売上の20%から、正確な率は内見後) |
| 水道 | 集計元の帳簿で請求が2か月ごとになっていて、この期間の集計から外れているため | 実額を足す必要があります。つまり27.9%は少なめの数字です |
| 予約サイトの手数料 | これは運営費の集計であって、販売経路側の費用は別の行のため | 経路の構成で変わります。目安は月次P/Lの読み方に |
なぜ家賃と代行手数料を外して数えるのですか
オーナーが自分の物件を計算するときに、この2行が二重に入るか、まったく入らないかのどちらかになるからです。どちらの間違いも金額が大きく、比率の議論を成立させません。
自社は運営している建物を借りています。だから自社の帳簿には家賃の行がありますが、それは自社が借主だからで、自分の物件を預けるオーナーの立場では家賃はゼロか、ローン返済という別の性質の行に変わります。ここを混ぜたまま比率を出すと、賃借前提の数字を自己所有の物件に持ち込むことになります。
代行手数料も同じです。自社物件は自社で運営しているので、この行は存在しません。オーナーの側から見れば代行手数料は最大級の行のひとつなので、外してあることを明示しないと、比較したときに当社が不自然に安く見えます。料金モデルごとの手元の残り方は運営代行の費用に書きました。
したがって、27.9%は「残りの72.1%が手元に残る」という意味ではありません。手元に残る額を出すには、ここから予約サイト手数料、代行手数料、水道、そしてオーナー側の固定費を順に引きます(月次P/Lの読み方)。
どの費目を削ると、手元が実際に変わりますか
金額として動くのは清掃だけです。清掃を10%安くすれば売上の1.75ポイントが動きますが、保険を丸ごとやめても0.4ポイントしか動きません。同じ努力の量なら、清掃1回の中身を見に行くほうが4倍以上の効きがあります。
ただし清掃は、削ると別のところで返ってくる唯一の費目でもあります。清掃の質はゲストが到着から10分で判定する項目で、そこが落ちるとレビューが下がり、レビューが下がると単価が下がります。費用側で1.75ポイント削って、売上側で数ポイント失うのは珍しい話ではありません(民泊の清掃、レビュー評価)。削るなら単価ではなく、動線と資材と回数の設計を削ってください。
宿泊税はそもそも削る対象ではありません。ゲストから預かって自治体に納める性質の行で、自社では売上の1.1%でした。制度の有無も税率も自治体によって違うので、物件のある市区町村の窓口で確認してください。
保険も削る行ではありません。金額が小さいのは、日常の費用ではなく、いちばん悪い一日のための行だからです(民泊の保険)。
清掃費は、泊数と入れ替え回数のどちらで決まりますか
入れ替えの回数です。1泊の予約でも5泊の予約でも、退室後にやる作業はほぼ同じだからです。
自社は稼働率83.6%、平均3.3泊で回っているので、1室あたり月およそ7回の入れ替えになります(30×0.836÷3.3、2026年8月時点の自社実績)。清掃17.5%と消耗品4.2%を合わせた21.7%は、この回数と一緒に動く部分で、7費目の合計27.9%の77.8%を占めます。
だから同じ稼働率でも、平均泊数が短い物件ほどコスト比率は上がります。稼働率だけを見て物件を比べると、この差が見えません(稼働率の読み方)。逆に、費用比率を下げる方法として現実的なのは値切りではなく、最低泊数と清掃料の設定を通じて1回あたりの泊数を伸ばすほうです。
自分の物件のコスト比率は、どう作ればいいですか
自社の27.9%を出発点にせず、ゼロから4段で組み直してください。他人の比率を借りると、いちばん大きい行の前提まで一緒に借りることになります。
- ◆入れ替え連動の行を先に置く:清掃と消耗品。想定する平均泊数と稼働から月の入れ替え回数を出し、1回あたりの実費を掛けます。ここが最大の行なので、ここの精度が全体の精度になります
- ◆在室連動の行:電気、ガス、水道。暖房が効く地域では冬に跳ねるので、年平均ではなく月別に置きます(雪国の民泊)
- ◆物件固定の行:保険と修繕。金額は小さいものの、建物の年式で修繕の性格が変わります。古い建物ほど、平均ではなく突発として計画してください
- ◆最後に外側の行を足す:予約サイト手数料、代行手数料、宿泊税、そしてオーナー側の固定費(ローンまたは家賃、固定資産税)
代行会社のコスト報告は、どこを見ればいいですか
合計の数字ではなく、行の粒度と、外してある行が明記されているかを見ます。この2つが揃っていない報告は、翌月の予測に使えません。
| 聞くこと | なぜ数字が変わるか |
|---|
| 費目は何行に分かれていますか | 「運営費一式」で1行にまとめられていると、清掃の単価が上がっても報告書の上では見えません |
| 合計から外してある費目はどれですか | 外す行を選べば、合計の比率はいくらでも低く見せられます |
| 清掃は実費請求ですか、定額ですか | 定額なら、実費との差額がどこに残るのかが論点になります |
| 消耗品は誰が買って、誰の値段で請求されますか | 立替の方法によって、同じ品物でも請求額が変わります |
| 入れ替え1回あたりの単価と、月の回数は出ますか | 比率ではなく単価と回数で見ると、翌月の費用を自分で計算できます |
自社が約束すること、しないこと
27.9%が他人の物件で再現するとは言いません。この比率は建物の年式、間取り、収容人数、都市、そして単価の設定の合成で、自社6室が12か月で記録した実績です。預かる前の物件について、コスト比率を数字で約束することはできません。
約束できるのは形式のほうです。費目を行に分けて出すこと、合計から外した行をその場で明記すること、そして清掃については比率ではなく1回あたりの単価と月の回数で報告することです。この3つが揃っていれば、オーナーは自分で翌月を計算できます。計算できる報告だけが、判断に使える報告です。
自分の物件のコスト構成を見てもらう →