1棟で持つ場合、年間で最も強い月は最も弱い月の1.3倍から1.4倍になります。自社の実数では、東京3室が72.6%から95.2%で1.31倍、札幌3室が68.3%から94.0%で1.38倍でした(2025年8月から2026年7月の12か月、2026年8月21日時点。計算方法は運営データに公開しています)。
ところが同じ12か月を会社全体でならすと、振れは76.3%から90.3%、1.18倍まで小さくなります。この差は運営が上手いからではありません。東京と札幌が逆向きに動いているからです。そして1棟しか持たないオーナーには、この打ち消しがありません。
東京と札幌は、いつ強くていつ弱いのですか
東京は秋がいちばん強く、札幌は冬がいちばん強いです。3か月ずつまとめると、東京は9月から11月の90.1%が最高で12月から2月の81.2%が最低、札幌は12月から2月の88.3%が最高で9月から11月の78.5%が最低でした。ちょうど鏡になっています。
| 3か月 | 全体 | 東京3室 | 札幌3室 |
|---|
| 12月から2月 | 84.4% | 81.2% | 88.3% |
| 3月から5月 | 84.4% | 88.8% | 80.0% |
| 6月から8月 | 80.8% | 81.8% | 81.1% |
| 9月から11月 | 84.8% | 90.1% | 78.5% |
同じ月に、2都市はどれくらい離れますか
いちばん離れた月で25.0ポイントです。2025年11月は東京93.3%に対して札幌68.3%でした。逆に2026年2月は札幌94.0%に対して東京84.5%で、9.5ポイント札幌が上です。同じ会社の、同じマニュアルで回している部屋です。
月ごとの谷の位置も都市で違います。東京の最低は2025年8月の72.6%、次が2025年12月の78.5%。札幌の最低は2025年11月の68.3%、次が2026年4月の71.1%でした。札幌の谷は真冬ではなく、シーズンとシーズンの間、つまり11月と4月に来ます。
会社全体の振れが小さいのは、運営が上手いからですか
違います。2都市が逆に動いているだけです。12か月の月別稼働について東京と札幌の相関係数はマイナス0.56でした(相関係数は2つの数字が同じ方向に動く度合いを表す指標で、プラス1が完全に同じ方向、0が無関係、マイナス1が完全に逆向きです)。
もっと分かりやすい形で言うと、この12か月のうち、東京と札幌がそろって自分の年間平均を下回った月は一度もありません。片方が沈む月は、必ずもう片方が浮いています。
これはポートフォリオ効果、つまり動きの違う複数の資産を合わせると振れが打ち消し合う現象であって、運営の成果ではありません。オーナーが自分の1棟の計画に会社全体の平均を借りると、自分が持っていない打ち消しを前提に計算することになります。
弱い月には、費用の比率はどう動きますか
ほとんど動きません。公開している運営費27.9%のうち、22.8ポイントは泊数に比例して減る費目だからです。
| 費目 | 売上比 | 稼働が落ちた月の動き |
|---|
| 清掃 | 17.5% | 泊数に比例して減る |
| 消耗品 | 4.2% | 泊数に比例して減る |
| 宿泊税 | 1.1% | 泊数に比例して減る |
| 電気 | 2.6% | 基本料金の分は残る |
| ガス | 1.0% | 基本料金の分は残る(冬は増える) |
| 修繕 | 1.1% | 稼働とは連動しない |
| 保険 | 0.4% | 変わらない |
では、季節の谷で本当に効くのはどこですか
この27.9%の外側です。中身のほうは、計算すると1ポイントしか動きません。
札幌の最低月68.3%は、単価を動かさなければ平均的な月の83.3%の売上です。このとき比例して減る22.8ポイントは売上比では変わらず、残りの5.1ポイントが5.1÷0.833で6.1%相当まで重くなります。合計で27.9%から約28.9%、動いたのは1ポイントです。
効くのは、売上が落ちても額が変わらない支出のほうです。返済や賃料、年払いの点検、そして札幌なら冬支度。自社では雪の準備の手間と費用が、年間最低だった11月にまとめて来ます(雪国の民泊)。なお27.9%には賃料と管理手数料が入っておらず、水道もこの期間の元帳になかったので含めていません(運営コストの記事)。
谷が来ることは、いつ分かるのですか
6週間前には分かります。自社12か月449件の予約は、予約から到着までの中央値が42日でした。来月の稼働は今日の時点ですでに半分が確定しているので、弱い月は近づいてから気づくものではなく、先に見えているものです(予約リードタイム)。
それでも毎年同じ月で慌てるとしたら、原因はカレンダーを見ていないことではなく、前年の同じ月の数字を持っていないことです。自社は都市別・部屋別の月次を残しているので、2年目からは「その月の去年」が基準になります。1年目はこれが作れないので、市場の季節ではなく自分の物件の季節を記録する年だと決めてかかるほうが安全です。
谷の月に、運営側は何をしていますか
順番があります。一律の値下げは最後です。
- ◆最低宿泊日数を下げる。谷の月の空きは1泊2泊の断片で出るので、2泊以上の縛りを外すだけで売れる枠が増えます。
- ◆長期割引を谷の月だけ入れる。ただし上限があり、自社の計算では8.8%を超えると、浮いた清掃より値引きのほうが大きくなります(平均3.3泊の話)。
- ◆点検と修繕と撮り直しを谷の月に寄せる。消防点検、家具の入れ替え、写真の更新。強い月に部屋を止めるのがいちばん高くつきます。
- ◆そのうえで単価を触る。稼働は値下げで買えますが、単価を15%下げると98.4%の稼働でようやく売上が並びます(稼働率の記事)。
1棟しか持たないオーナーは、何を基準に資金を組めばいいですか
年間平均ではなく、その都市の最低月です。年間平均は報告のための数字であって、計画のための数字ではありません。
自社の実数で言うと、単価を動かさない場合、東京の最低月は年間平均の85.0%、札幌は83.3%の売上水準でした。2都市に分かれていない1棟なら、この谷がそのまま自分の谷になります。
手順はこうです。1つ、その都市の弱い季節を先に特定する。2つ、弱い月の売上を平均月の85%前後として置く。3つ、その月に額が変わらない支出(返済、賃料、年払いの点検、保険)を並べる。4つ、その差額の何か月分を手元に置くかを決める。4つ目まで決めて初めて、季節変動は不安ではなく数字の話になります(月次の読み方は民泊の収支)。
自社が約束すること、しないこと
他人の物件について、何月に何%になるとは言いません。季節の形は都市と立地と客層で決まり、運営側が動かせるのはその上の一部だからです。ここに出した数字はすべて自社6室の実績であって、これからお預かりする物件に出る数字ではありません。
約束できるのは方法です。都市別・部屋別の月次をそのまま毎月出すこと、2年目からは前年同月と並べて出すこと、そして谷の月の計画を谷が来る前に一緒に作ること。谷が来てから値下げを相談するのは、いちばん高い解き方です。